Cyber Tera

ガジェット系・ウィルコム系ブロガー

  • 時代の変化のせいだけにしてはいけない〜WX04Kその2〜

W-ZERO3シリーズは確かに特定の人々の心を捉えたのは事実である。しかし、iPhoneの様に時代をひっくり返すだけの影響力はもたず、市場的には淘汰されてしまった。

W-ZERO3が人々の心を捉えることが出来たのは、NTTドコモがiモードのヒットによって構築したビジネルモデルを、あるいはひっくり返せるかもしれないという期待感と、PHSというマイナー規格がそれをなし得る、世界が変わるかもしれないというロマンチシズムによるものだった。

しかし、そういった感情を覚えた人はさほど多くなく、大概は単に最新機器を使いたいアーリーアダプタが主で、より先進的なイメージが有るiPhoneに流れていった。

そして2010年には特徴的なことが起きた。これまではiOS vs Windows mobile だったスマートフォン市場において、Androidが台頭したのだ。ドコモであればサムスンGALAXY SことSC-02B、auであればIS03の爆発的ヒットにより、一気にiOSの対抗馬としてのAndroidが注目されるようになる。同年には東芝製のT-01BやIS02、サムスン製のSC-01Bも発売されたが、ほとんど市場的なインパクトを残さず消えていった。これにより、iOSの対抗馬は完全にAndroidというのが世間一般の認識となってしまった。

その年に発売されたのがHybrid W-ZERO3ことWS027SHであり、Windows Mobileの凋落とウィルコムの凋落が奇しくもバッティングする事となってしまった。

もちろん、W-ZERO3シリーズがブランドとしての求心力を失ったのは、そういった外的要因だけでなく、遺作となったWS027SHの端末そのものがあまりに完成度が低かった事もある。

まず電波感度が致命的に悪い。同じW-SIMを使っても今までは平気だったのがWS027SHでは圏外になったり不安定になる程の制御のまずさ。ウィルコムソフトバンク・グループ入りしてから不採算局や老朽化した局の撤去を進めていると言われており、そのせいで接続性が悪くなったという意見を散見するが、どうもこの端末が原因である部分もありそうだ。

次に動作が全体的に緩慢である。Windows Mobile6.5は中途半端にiOSを意識してしまっているせいでOSそのものの動作が遅くなっている上に、WS027SHでは使用されているプロセッサが遅いのも相まって動作が異様に緩慢だ。半年も前に発売された東芝製ドコモ向け端末のT-01Aが1Ghz動作のSnapdgaronを積んでいたのに、WS027SHは528Mhz動作のARM11だから見劣りするのは当然。もっと言ってしまえば、1年半前に発売されたWS020SHがPXA270の520Mhzだから、クロック周波数だけみれば、ほとんど変わりがない。加えて独自ランチャーのWILLCOM UIが異常に重く、この端末の遅さを際立たせている。WS020SHで上がった不満で一番大きかったのは、通信速度が遅い事だったので、今回はFOMA対応にしてPHSW-OAM TypeG対応にしたなどと当時のウィルコムは発言していたが、いくら通信速度を向上させても、端末の性能が低ければ体感的な速度向上は得られず無意味では。

メールアプリがダメという点も外せない。W-ZERO3[es]WS007SH)から搭載されていたW-ZERO3メールというキャリアメール(~@pdx.ne.jp、~@willcom.com)を利用するためのアプリが搭載されていたが、機能が少ない上に重く不評だった。そこでWS027SHではOutlookを独自拡張してキャリアメールを利用出来るようにしたが、フォルダに振り分けておかないとメールをローカル保存出来ずサーバーと同期させる仕組みのため、サーバー保存期間である1ヶ月経つと自動的に消えるというお粗末すぎる仕様だった。おまけに絵文字やディコラティブメールを閲覧するにはあのWILLCOM UIを使えという鬼のような仕様。WILLCOM UIは遅いから殆どの利用者が外しているだろうに、あんまりな仕様だった。さらにメールが少ない状態では軽くなったが、溜まってくると今まで以上に重くなるというとんでもない仕様。

あと、あまり触れられていない点だが、GPS搭載を謳っている物の、精度が低いため検出に時間がかかる上、失敗することの方が多かった。

このように、あまりにも完成度が低く、ほめられるところが少ないWS027SHだが、一部では熱狂的に支持された。それは料金体系である。

WS027SHは専用の料金プラン、新ウィルコム定額プランGが用意された。当初はPHSパケット通信利用時の上限金額が2800円だったのだが、発売から一ヶ月ほど経過した2010年3月から、基本料金だけでPHSパケット通信が利用出来るようにしたのだ。基本料金が1450円なので、端末代金と合算しても1450(基本料金)+2910(端末割賦)+1340(W-value割引)=2930円で利用出来る計算になり、端末代を一括払いにしている人なら、110円で利用出来るのだ。

しかし一方で、FOMA回線利用時に有料コンテンツやキャリアメールの受信が出来なくなった。その後WILLCOM UIやメールの根本的解決はなされなかった。おそらくまともにつかるレベルまで改修するための費用より、値下げすることによって失う収益の方が少なく、結果として安く済むと踏んでの事だろう。しかし改善はしない、代わりに安くするから文句言うなというのは下の下の策で、結局純減に歯止めはかからなかった。で、まともな客は去り安ければ何でも良い質の悪い客を呼び入れる最悪の事態に至った。

続く