Cyber Tera

ガジェット系・ウィルコム系ブロガー

少々乗り遅れたけれど、我が家にもやってきたイーモバイル減速のお知らせ。元々イーモバイルは1.7Ghz帯を15Mhz使用しており、それを5Mhzづつに区切って5Mhz1波をLTEに、10Mhz2波をEMOBILE G4(3Gサービスのことをイーモバイルではこう呼ぶ)にそれぞれ割り当てている。このEMOBILE G4は対応機種であれば21Mbpsの通信を2波重ねあわせるDC-HSDPAを使い最大42Mbps*1のサービスを行なっていた。一方LTEでは5Mhz1波では37.5Mbpsが理論値で、イーモバイルが標榜していた理論値75Mdpsはごく一部の基地局のみの対応となった。75Mbps対応基地局ではLTEに2波使っているため、今度はG4端末で42Mbpsがでなくなる。

つまり、LTEなら理論値75Mdbps、G4なら理論値42Mbpsを標榜しつつも、実態は両立しえず、LTEが37.5MdpsとG4が42MbpsかLTEが75MbpsならG4が21Mbpsというかなりおかしなサービスだったのだ。

ならばいずれLTEに一本化するために最初からG4サービスなど始めなければ良かったのだが、これはUQ WiMAXに対抗するための急場しのぎと思われる*2。この時点ではイーモバイルが提供しているサービスはHSPA+を利用したもので理論値21Mdps、UQ WiMAXが理論値40Mbpsであるため、カタログスペックでは大幅に見劣りする。ここでLTE導入まで踏みとどまってバックボーン回線の増強や面的エリア展開を進める等の足場を固めてLTEで巻き返す戦略ではなく、場当たり的にDC-HSDPAを導入してカタログスペックを合わせてくるという荒業をやってのけた*3。しかも全エリアをDC-HSDPA化するのも手間とみるやEMOBILE G4の定義を変えて、DC-HSDPAで42MbpsをG4と呼称するから既存サービスを全部G4と呼ぶに改めた*4

DC-HSDPA導入の背景には2013年現在未だ浮いている1.7Ghz帯の最後の1波もイーモバイルが獲れるというあやふやな根拠にも基づいているようだが、結局NTTドコモKDDIau)も固執しているため獲れていない。

今回の一件は雑な見通しで場当たり的な対応ばかり繰り返していた前経営陣が残していった負の遺産で、結局最後までイーモバイルというのは胡散臭い会社だった。

しかしそういった場当たり的な対応が浮き沈み激しい通信業界において功を奏したのもまた事実。今では仲良くソフトバンク・グループの一社となったウィルコムと比べるとその差は歴然。

ウィルコムは将来を見据えすぎて目先の解約抑止や対抗サービスを打ち出せず、結果として切り札たるXGPも採算性が見込めないとして銀行から融資の借り換えを認められず倒産に至った。*5

一方でイーモバイルを展開していたイー・アクセス社は優良企業としてiPhone5のバイパス線が欲しいソフトバンクKDDIの二社による取り合いの末ソフトバンク三顧の礼を持って迎えられた。

その場しのぎで客を欺くようなやり方をしておきながら最終的にうまく逃げ切ったのがイーモバイルの結末。理屈としては分かるがどこかやりきれないものが残った。

*1:当初は42MbpsサービスをEMOBILE G4と呼称していたが、後に定義を変えLTE以外のサービス全般を指す呼称となった。ここでは当初の定義通り理論値42MbpsサービスをG4と呼ぶ

*2:UQ WiMAX、7月1日に本サービス開始──1日プランやWiMAX内蔵PC購入時の利用概要も公開

*3:イー・モバイル、下り最大42Mbpsのデータ通信サービス「EMOBILE G4」を発表

*4:EMOBILE G4」の呼称範囲を拡大、6月に料金値下げ

*5:よって本当に夢を奪ったのはソフトバンクではなく借り換えを認めなかった銀行であって、ソフトバンクを責めるのもお門違いだと思うが、この話はまた違う機会に