Cyber Tera

ガジェット系・ウィルコム系ブロガー

ハイエナの敗北

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一時期社長の過激な物言いでネットで話題を振りまいたエムグラントフードサービス。社長の井戸実氏は今後10年間は僕の独壇場とまで豪語していた*1が、この所失速気味だ。最盛期に200店舗を超えていたけんの店舗はいまや142店舗と150店舗*2を割り込む事態に陥っている。さらには他社のステーキレストランの「あさくま」にフランチャイズ加盟*3するという事実上の敗北宣言すらしている。「けん」と「あさくま」では「あさくま」はより客単価が高く、新たな市場を開拓できるとしているが、けんでも過去に高単価メニューの発売をしているので、敗北宣言と受け止められるのもやむなし。さらに今人気沸騰中の「いきなりステーキ」(ペッパーフードサービス系)にあやかった「鶴亀屋総本店」なる店を系列のふらんす亭で始める始末*4井戸実社長はかつて「けん」を真似た「ステーキガスト」(すかいらーく系)を批判していたが、今や彼が真似をする立場に落ちぶれた。

 

ではなぜ、ここまでエムグラントフードサービスは落ちぶれてしまったのだろうか。まず第一に、この会社が売りにしていたのは郊外型ファミリーレストランの居抜きを利用することで出店費用を最低限に抑えられる事だ。ならば、撤退したい不振店を抱えているファミリーレストランの運営企業が同種の業態を作り上げれば、撤退した後みすみす他社に売上を渡すこと無く自社で再建が出来る。そうなると物件を確保することが困難となる。加えてエムグラントはセントラルキッチンを持たないため、セントラルキッチンを持つ大手資本系に対してコスト面で不利だ。更に決定的なのは内装で、「けん」の内装は撤退前の内装をそのまま流用しているので小汚い店舗が多いが、大手資本系は内装を作りこんで来るため、家族連れが中心となる店舗ならやはりきれいな店が選べれてしまう。内装経費はセントラルキッチンで原価を抑えて帳消しにするといったところか。原価率が「けん」が40%、「ステーキガスト」が35%、「カウボーイ家族」(ロイヤルホストのロイヤル系)が38%といわれているから長期戦になれば「けん」が圧倒的に不利になる。

 

次に考えられるのはメニューをコロコロ変えたことではないか。元々けんステーキは成型肉に頼らず固めの肉をそのまま出しており、アメリカンスタイルなそのワイルドさが受けていた。それを途中からミスジ肉を使うことで柔らかく(と同時に値上げ)する。さらに原価が高く厳しかったのかミスジ肉をやめ、柔らか加工(成型肉)を使った物に変える。看板メニューをコロコロ替えてしまうことでお客さんが相当離れたはずだ。

 

長々書いたけれど、結論としては思いつきでふらふらと不誠実な事をやっていると、いつかは足を掬われるよということ。穴が見つかったら即効で責められるし人も離れていくものなのだ。