Cyber Tera

ガジェット系・ウィルコム系ブロガー

人類の進化は常に犠牲を強いてきた、今回も同様だ

元々仮面ライダーウィザードは仮面ライダーフォーゼのモチーフがSFのため、今度はファンタジーをモチーフにしたとのことだが、実は正邪の対立構造も真逆の内容となっているのだ。仮面ライダーウィザードの完結編である劇場版「仮面ライダー×仮面ライダー 鎧武&ウィザード 天下分け目の戦国MOVIE大合戦」を見てきた記念にまとめてみる。

仮面ライダーフォーゼの黒幕、我望光明(演:鶴見辰吾)は宇宙最大の英知「プレゼンター」に接触し、人類の超進化を目指そうとする。そのためにゾディアーツスイッチを開発し、ゾディアーツスイッチを進化させる為に必要な思春期の人間を収集するために天ノ川学園高校を設立した。学生にスイッチを使わせることでスイッチの成長と進化を行い、プレゼンターに接触するため必要なホロスコープスイッチへと進化させる。そのために学生の将来がどうなろうが知ったことではない。マクロ的な目的(人類の超進化)に比べればミクロの犠牲(天高生徒の将来)は厭わないのが我望の手法で、そこに立ち向かう仮面ライダー部というのが仮面ライダーフォーゼにおける正邪の対立。

一方仮面ライダーウィザードにおける黒幕、笛木奏(演:池田成志)は不治の病によって失った愛娘、笛木暦(コヨミ)を蘇らせるため、魔法使いとなる素質をもった人間を集めようとする。集まった4人の魔法使いを使い東京全体を巻き込んだサバト*1を開き東京中の人間を皆殺しにして得た魔力を賢者の石に注ぎ込むことで娘を蘇らせようとした。ミクロ的な目的(娘を蘇らせる)の為にマクロ的な犠牲(東京都民全員の命)を厭わないのが笛木の手法で、それに立ち向かう魔法使いという対立構造となっている。

仮面ライダーフォーゼの正邪の対立構造が魔法少女まどか☆マギカに類似しているというのは以前に書いた*2が、マクロ的な大義の為にミクロ的な犠牲を出すことは有りや無しやというのは多分に時代性をもったテーマである。そこに仮面ライダーウィザードではあえて正反対のテーマを持ってきた所が面白いところ。東映特撮は元々敵側のドラマを盛り上げる傾向があり、悲劇的なバックボーンを持った敵も多い。翌年には正反対のテーマ性をもたせるバリエーションの豊富さこそが今日まで東映特撮が生き残れた理由で、これからも御託を並べたくなるし見逃せない理由なんだろう。

*1:ウィザードの怪人、ファントムを生み出す儀式。ファントムになる素質を持たない人間は巻き込まれると死ぬ。ファントム化した場合も人間の精神が消滅しファントムとしての精神に入れ替わるため、死ぬのとさほど変わらない。

*2:[id:mortal:20130307]