前回のブログに関連して、エディオンの神奈川県侵略作戦について考察してみる。
序章として、まずは2006年から2013年におけるエディオンの関東進出作戦についておさらいしてみよう。
エディオンの実質的な前身企業であるデオデオは80年代に群馬県のジャスト社と埼玉県の正能電気を買収*1し、90年代にはみなとみらいジャックモールへの出店を行うなど関東進出を試みたこともあったがあまり上手く行ってはいない。
エディオン設立後の2003年に成長著しいヤマダデンキへ対抗するために共同仕入れ機構ボイスネットワークを設立するが、その加盟社に関東を地盤とする企業は無かった。
新着情報一覧:家電専門店5社グループ名称のお知らせ|株式会社デンコードー
しかし本邦最大の消費地である関東進出は悲願であり、2006年、エイデン、デオデオ、ミドリ電化の持株会社となったエディオンは石丸電気の株式を取得する。
https://www.edion.co.jp/system/files/prev-gen/file/20080625石丸電気の株式追加取得について.pdf
石丸電気は秋葉原を中心に一都四県(東京都、埼玉県、神奈川県、千葉県、茨城県)と新潟市に店舗を構える中堅の家電量販店チェーン店であった。
続く2007年には関東進出に向けた子会社東京エディオンを設立し、石丸電気をエディオンの直接の子会社から東京エディオンの子会社とした。
そして東京エディオンの店舗として高井戸店をオープンすることになった。
続いて関東にあるミドリ電化の店舗を東京エディオンへ移管して屋号をエディオンへ切り替える。
デオデオだけは何故か屋号を替えずそのまま東京エディオンの運営に移行する。
そして東京エディオンで2012年に売上高2000億円を目指して事業拡大を目指すことになる。
エディオン/東京エディオンに関東エリアの事業展開集中 | LNEWSバックナンバー
しかし新規出店は進まず*2、既存店の営業成績も振るわなかった。
既存店の敗因としては以下が挙げられる。
石丸電気は他の家電量販店同様の会員制度だったのにたいして、東京エディオンとデオデオは有料クレジットカードのeeカードによる独特の会員制度で2011年まで相互乗り入れが出来なかった。
- 石丸電気の苦境
2005年にヨドバシカメラが秋葉原へ出店したことにより、多くの秋葉原を地盤とする家電量販店は危機に瀕する。
ただ日本橋でんでんタウンとの大きな違いとして、秋葉原地盤の家電量販店はヨドバシアキバ以前からすでに経営的に追い詰められており、ヨドバシカメラの進出が無かったとしても結果は数年遅れるがあまり変わらなかったように思える。
例えばラオックスは仙台店やデジタル館といった超大型店の失敗、サトームセンは高度化の出遅れ*3で既に失速していたのだ。
石丸電気もまた立川ビッグワンや秋葉原テレビタワーの失敗で失速しており、ヨドバシカメラの進出後に秋葉原での店舗数を減らしている。
ヨドバシアキバ進出から18年半経った現在は旧石丸電気の秋葉原の店舗はエディオンAKIBA1店舗のみとなる。
加えて石丸電気がこれまで得意としていた分野が全て時代遅れのものとなったのも敗因。
映像音楽ソフトは映像配信サービスや音楽配信サービスの普及によりパッケージ版が売れなくなる。
オーディオは市場が大幅に縮小、グラビアアイドルはイエローキャブのお家騒動やAKB48などの秋元康グループの台頭により専業のグラビアアイドルが数を減らすことになる。
- バラバラな立地
上記のように元々は別々に展開していた企業をまとめたため、ドミナント戦略をとれずバラバラな場所に出店していた。
石丸電気の秋葉原各店とつくば店、ミドリ電化ロックシティ守谷店のようにつくばエクスプレス線沿線でドミナントになっていた部分もあるが、そこを意識した宣伝は行われなかった。
つくばエクスプレス線内で車内広告を打っていたのはヨドバシアキバとオノデンだったりする。
上記によりエディオンの関東における営業は不振を極め、東京エディオンは2009年に消滅。同年と2013年には大リストラを行い多くの店舗は閉鎖に追い込まれることとなった。
2013年に閉鎖された店舗にはミドリ電化の地域子会社である株式会社ミドリの本社が置かれていた柏沼南店や石丸電気の本店だった秋葉原本店も含まれていた。