Cyber Tera

ガジェット系・ウィルコム系ブロガー

オリジナルの次世代高速通信、XGPが頓挫しWindows Mobileも後発のAndroidに淘汰されウィルコム自体も倒産しソフトバンク・グループの傘下企業として総合通信網の一端を担うだけの存在に成り下がった。次世代高速通信と汎用OSを用いたスマートフォンで日本の携帯電話市場に一石を投じる等という夢は霧散してした。

そしてウィルコムは同じくソフトバンク・グループで移動体通信を営むソフトバンクモバイルの補完として、安価に音声通信を利用したい客層をターゲットとする事業展開を強いられていく。しかしさすがにAndroid携帯を一機種も持たないという事では今時真っ当な移動体通信事業者とは言えないという経営判断か、ネットの閲覧用と通話用とで2台持ちは煩わしいので1台で完結出来る端末という需要は根強いと判断したのか、Androidを採用したスマートフォンを投入する事となる。それがこのWX04Kである。

しかしこの端末が発表された当初、インターネットにおいては酷評を浴びる事となる。その理由の最もたるのは、データ通信にPHSが利用出来ず、ソフトバンクモバイル網のW-CDMAを利用した通信しかできないという物だったからだ。これは、ソフトバンク・グループにおける通信形式と周波数の有効活用という面では実に合理的で、1.9GhzPHSを音声通話用の帯域として使い、1.5GhzHSPA+をデータ通信用に割り当てる事で、逼迫している2.1Ghz帯の負荷を低減させるというわけだ。しかし、これまで日本発で工夫次第では3Gと拮抗出来る優れた通信規格としてPHSを評価してきた人からすれば、単なる音声トラフィックのオフロードとしてのみPHSが使われるという扱いは許しがたいと。

加えて料金体系についてもバッシングが起こった。PHSパケット通信に対応していないので3Gの料金水準が持ち込まれた上、データ通信の料金は2段階制が導入されず、固定金額の定額制のみだった点だ。そもそもウィルコムの料金体系はおかしい(大手3社はガラケースマートフォンの場合、スマートフォンの方が回線負荷が大きいのでスマートフォンの方が高い料金を課しているのに対してウィルコムはなぜか逆。ガラケーの料金は新ウィルコム定額プランSなのでデータ通信の上限金額が2800円なのに対して、Hybrid W-ZERO3(WS027SH)は新ウィルコム定額プランG/GSが適用されるためデータ通信が無料)が、一度それに慣らされてしまうと割高感が強いのは否定出来ない。2段階制を導入しろというのは、2段階制は実質2選択制、少しでも使うとすぐに上限に達するから無意味と以前書いた([id:mortal:20101026#p1])が、3Gパケット通信を使わず、Wi-Fi運用すれば最低金額で使えるので、Wi-Fi運用で使うから安く使わせろということだろう。

勿論、PHSデータ通信に対応させていないのにも意味が有る。Windows Mobileは元来PHS非対応で、W-ZERO3シリーズでは独自にカスタマイズさせることでPHSデータ通信に対応させていた。当時はウィルコムは独立系で、自社の通信方式に対応させる方が利益率が良いからだ。しかし、ソフトバンク・グループ傘下になった今、わざわざそんな事に金を使わなくても、グループ内のリソースを使った方が効率が良いとなったのだ。加えて、PHSに対応させるとPHSパケット通信が無料の新ウィルコム定額プランGSでの提供を迫られる可能性もあり、ウィルコム側からすればなんでわざわざ安く使わせる口実を与えるために金をかけなければならないんだとなる。3Gの料金が必須なら、わざわざカタログスペックで劣るPHSデータ通信を載せる必然性も薄いと。しかしその効率性、割り切りが不興を買っているのもまた事実。